大きく変わる「相続」ー相続法改正についてー

2019年1月から順次,改正相続法が施行されています。相続の仕組みがどのように変わるのか,具体例によりご説明しましょう。

(新年の公園だよりに掲載したコラムの抜粋です。)

イメージしていただきやすいようAさん一家をモデルにご説明します。

 

 

(Aさんの主な財産)
 自宅不動産(時価2000万円)
 預金(2000万円)
 遺産総額:4000万円


Aさんは,家族が相続でもめないよう,遺言を書くことにしました。

 

手書きの遺言が書きやすくなる
 現行法では,自筆で作成する遺言は全文を手書きしなければなりません。高齢者には,あるいは遺産が多岐にわたる場合にはとても負担です。
 改正法では,不動産や預貯金明細などの遺産目録はパソコンで作成できることになり,負担軽減が期待されます。

 

自筆遺言を法務局に保管
 現行法では,自筆遺言は家庭裁判所で「検認」手続を受けなければなりません。改正法では,法務局に遺言を保管してもらう新たな制度ができ,その場合,検認は不要になります。施行は2020年7月10日からです。

 

 

Aさんは,遺言を書かないまま,自宅介護を受けながら亡くなりました。妻B・長女C・長男Eで遺産分割協議をすることになります。

 

配偶者は自宅に住み続けながら他の遺産も受け取りやすくなる
 妻Bが自宅に住み続けるため時価2000万円の不動産を相続すると,それだけで法定相続分全部をもらったことになります。預金は受け取れないので,その後の生活維持に不安が残ります。
 改正法では,「配偶者居住権」が新設され,不動産そのものではなく「自宅に住む権利」だけを相続できることになりました。この居住権の評価については固定資産税評価額をベースとした指針が示されており,不動産の時価より大幅に下がると想定されます。
配偶者居住権の評価額が仮に1000万円であれば,妻Bは,法定相続分に満つるまであと1000万円分の預金を受け取ることができ,生活不安を解消できるでしょう。

 

新設された預金の仮払制度
 預金は,簡単な割り算で法定相続分相当の金額を計算できます。では,遺産分割協議がまとまる前に,各相続人から銀行に,自分の相続分相当額の払い戻しを単独で請求できるでしょうか?答えはNOです。
平成28年最高裁判所は,預貯金も「遺産分割の対象である」と判断し,分割協議が終わるまでは各自単独で払戻しはできないことが確定しました。
 しかし遺族は,Aの死後,葬儀費用や未払の介護費用などを支払わなければならず,現金が必要です。このような場合に不都合が生じないよう,改正法には,一定の場合に預貯金の仮払いを認める規定が新設されました。

 

介護などに貢献した人も遺産をもらえる
 Aさんの自宅療養中,長男の妻Eが献身的に介護し,Aさんは深い感謝の内に亡くなりました。現行法ではこのような場合でも,法定相続人ではないE自身が相続において権利主張はできません。
 改正法では,社会の現実に目を向け,介護などへの貢献を適切に評価するため,Eは相続人らに対し,貢献度に応じた支払いを請求することができることになりました。

 Aさんは,遺言は書きませんでしたが,妻Bに自宅不動産を生前贈与しておきました。

 

配偶者への住居の贈与は特別扱い
 Aさん死亡時点の遺産は預金だけです。しかし相続法では,過去に行なった贈与の多くを相続時に存在するものと見なし,遺産に加算して分割協議を行ないます。結局,妻Bは相続手続で自宅を相続するのと同じ扱いで遺産分割をしなければならず,相続分の割合から見ると,生前贈与はあまり意味を持ちませんでした。
 改正法では,結婚期間が20年以上の夫婦であれば,配偶者から譲渡された不動産(生前贈与のほか遺言による遺贈も含む)は,遺産に含めなくてよいという前提で譲渡されたものであると推定すると規定しました。これにより妻Bは,既に自分名義となっている不動産のほかに,預金2000万円の2分の1である1000万円を相続できることになります。

 

 このほか,遺留分の減殺請求は金銭請求が原則となるなど,相続手続に大きな影響があると思われる改正もあります。当事務所では,改正法に習熟し,皆様のお役に立ちたいと考えております。

 

 

 

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