タクシーに乗って

寒くなってくると、夜遅くまで仕事をしたあと、バス停まで歩いて、バスに乗って、降りてまた歩くのがおっくうになって、ついタクシーに乗る機会が増えます。

一昨日のことです。
乗った車は、運転席の周りを透明のプラスチック・ボードでL型に囲んだフルバージョンの防護壁。運転手さんは女性です。
ぼんやりと、夜の井の頭公園を眺めていると、景色が止まり、信号待ちで停止したことがわかりました。ブレーキを踏んだ時の小さな衝撃がなく、「あ、止まってる・・・」と、停止した後に気がついたのです。

次の赤信号も、先行車両の手前でなめらかに、すべるように停止。
その次の時、少し前から注視すると、手前から柔らかくブレーキを踏み込んで減速し、停止直前にはほとんど減速しきっていて、止まる瞬間の衝撃がありません。
自宅前で降りるまでの何回かの停止が、全て、絶妙でした。

料金を払いながら、そのことを話し、本当に気配りをしながら運転しておられるのですね、と言いました。
運転手さんは、驚いたような表情で顔を上げて、「そんなことを言っていただいたのは初めてです。」
そしてちょっと声を詰まらせながら、「うれしくて涙が出ます。」
心配りの行き届いた運転をしてもらって、うれしいのは私の方です。
自分の仕事を愛し、誇りを持って、お客さんを大事に働いている人に会えて、心が温まりました。

そしてその翌日。
「ねえ、お客さん。今年はどんな年でしたか? 良いことありましたか?」
お客と話したいタイプの運転手さんのようです。
そして、「私はね、悲しいことが2つも続いたんです。」と。

長年仕えた方が夏前に亡くなられ、そのすぐ後にお弟子さんが後を追うように自死したとのことです。名前は言いませんでしたが、私にも、有名な女性の演歌歌手のことだとわかりました。問わず語りで、そのお師匠さんとお弟子さんの思い出話が、ぽつりぽつりと続きます。お弟子さんの歌手の方は、ここ数年消息がわからず、周りの方々の心配の中でのご不幸だったとのことです。
当時マスコミをにぎわせていて、それを聞きかじった程度のことしか知らなかったのですが、「あの方は、『幸せになり方』をご存じなかったような印象でしたね。」と、話の相槌を打ちました。

すると運転手さんから、「そう、そう、そうなんです! そのとおりなんです!」と、ちょっと興奮気味な答えが返ってきました。湿っぽい話になったことを気にしてか、「お客さん、その表現のとおりです。座布団、5枚です!」
親しい人を理不尽な形で失った人は、その理由を自分なりに考えるしかありません。そのつらい作業の、一つの答えが、偶然見つかったのかもしれません。

悩み、苦しんでおられる方々に、日々接することの多い仕事です。『幸せになり方』を忘れかけている方には、それを思い出していただけるようにしなければ、と思った夜でした。

投稿者:幸


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