10月末をもって、一橋大学法学部特任准教授、3年の任期を務め終えました。
思えば、長男の出産直前の2020年初夏、恩師からお声がけをいただき、当初9月からの勤務開始のお誘いだったのですが、7月に出産予定であるためさすがに9月は・・・ということで、11月の着任となったことを懐かしく思い出しました。
任期満了の数日前、研究室の片付けに出かけてきました。
研究室の鍵と職員証を返却し、少しキャンパスを散歩して帰りましたが、変わらず緑豊かなキャンパスが秋晴れに映え、この日ばかりは、感傷的なタイプではない私も、少しばかり寂しさがこみ上げました。
着任当時は、法学部に法曹コースが設置された初年度であり、コロナ禍ど真ん中でもありました。
オンライン授業の実施など、様々なことが手探りの中、教員生活が始まりました。
Zoomで開講したゼミの初回、画面の向こうの学生達に、ゼミの中に友人同士はいるのか聞いてみたところ、小さな大学で更に少人数の法曹コースの受講生にもかかわらず、ゼミ生の中に顔見知りがたった一組いただけという状況に驚いたことを、よく覚えています。
対面の授業もままならず友人すら作りにくい環境の中、司法試験の勉強仲間に出会うハードルは高いものだったと思います。
このような、まさに非常事態の中、たくましく勉学に励んでいた受講生達は、将来、司法試験合格の後、社会に有為な人材として活躍してくれることと、期待しています。
この間、春夏学期には「法律家と現代社会」、冬期集中講義として「法律実務入門」を開講し、合間に法曹コース向けのゼミを受け持つというスケジュールで、主に法曹コース必修科目を担当してきました。
開講にあたっては、法曹・有資格者のキャリアの多様性から、具体的な業務のビジョンをもってもらうことを目指し、裁判官、検察官はもちろん、国家公務員、インハウスロイヤー(外資系企業、国内企業に止まらず、先端分野の研究機関に勤務する同期も毎年講義をしてくれました。)、他、刑事弁護、労働問題、被災地支援、外国人の権利、ビジネスと人権等、諸問題に取り組む弁護士の皆さんに講師等としてご協力をいただきました。
法律実務入門では、都内大規模事務所から事務所訪問を含むカリキュラムのご提供をいただくこともかない、改めて、多数の方々のご協力あってこその3年間だったと振り返っています。
また、東京弁護士会法教育センターが企画して下さっている法廷傍聴や、日弁連法科大学院センターの「弁護士に会ってみよう」企画も活用させてもらいました。
友人・知人が多いことが、自分の数少ない長所だと思っていますが、この3年間ほど、この長所が生かせたことはなかったのではないかと思います(笑)
この間、ゼミや、講義後の質問、法律家と現代社会受講生からのオフィスアワーの申し込みなど、直接学生と話をするという、貴重な時間を得ることもできました。
また、法曹コースを担当する研究者の先生方との、日常的なやりとりも多く、大学現場の実際の状況を垣間見る機会にもなりました。
3年という限られた時間ではありましたが、公益活動として法曹養成に携わる者として、法曹教育の現場に教員としてかかわることができたことは得がたい経験でした。
今後は、この経験を十分に生かし、法曹養成制度の改善にかかわる中で、現場の視点も踏まえた多角的な発信ができるよう心がけていきたいと思います。
また、かねてから、大学等の法人の法務に携わってきていますが、現場の中に入ることができたことは、実務家としても非常に有益でした。
ハラスメント防止研修などにも、現場の視点を現実感をもって取り入れることができるようになったという実感があります。
振り返ってみると、下の子の生後4か月からの実務復帰と同時に教員生活のスタートとなり、この間に、上の子の入学、引越し、事務所代表の引き継ぎ、事務所移転など、これでもかというくらいイベントの重なった3年間で、間違いなく人生で1番多忙な時期だったと感じています。
無事に走りきることができたのは、家族、事務所メンバー、同僚の先生方、そして講師等としてご協力いただいた皆さんのおかげです。
また、私の講義を受講してくれた多くの学生の皆さん、充実したゼミの時間を一緒に作ってきたゼミ生達に、感謝します。
投稿者:弁護士 酒井 圭