家事事件手続法施行後の調停について

家事事件手続法についての研修を受けてきました(1)に続き,(2)を書く予定だったのですが,なかなか書けないまま時間がたってしまいました(苦笑)

今年1月から家事事件手続法が施行され,東京家庭裁判所での運用にも新たな試みが取り入れられ始める中,日々の家事調停事件(離婚調停や遺産分割調停など)に取り組んでいます。

(2)に変えて,受講した研修も踏まえ,家事事件手続法施行後の,調停についての雑感(主に東京家裁の運用について)を投稿します。

 

1 当事者同席での手続説明について

  毎回の調停の最初に,当事者双方とその代理人が同時に部屋に入り,その日の調停のテーマ,進行などについて確認をします。また,その日の調停の最後に,やはり双方当事者・代理人が一堂に会し,その日の調停の進捗と次回までの双方の課題(提出資料や主張書面で追加すべき主張など)を確認して,調停が終わります。

  家事事件手続法施行前は,離婚調停で当事者が同席する場面は,特に対面して確認すべき事項がある場合(たとえば,離婚調停で相手方が離婚意思を直接申立人本人の口からききたいなどの強い希望があった場合など。)や調停成立時に双方の意思確認をする時などに限られていました。それが,毎回の調停で必ず2回は同席することになったため,かなり同席する場面が増えた,という印象が強いです。

同席の場面でも,当事者の間にそれぞれの代理人弁護士が入るので,「対面」という状態にはなりませんが,離婚調停など,同じ部屋にいるというだけで依頼者が強いストレスを感じるというケースは多々あるので,依頼者には事前に十分な説明をしておく必要があります。この点,研修では,深刻なDVのケースなど申立時に提出する「進行に関する照会回答書」の裁判所に配慮を求める事項欄に,手続き説明の同席も不可能である旨記載すれば,手続説明を同席でするか判断する際に考慮するとの説明があったので,このような場合には,事前の対応を欠かさずにすべきです。しかし,原則実施という運用となっている以上,相応の理由がなければ実施するという方針かと思いますので,できる限り顔を合わせたくないので・・・という理由では通らないものと思われ,依頼者への事前の説明の必要性を改めて感じています。

 

2 主張書面の扱いについて

  研修では,家事事件手続法の改正により,申立書写しを相手方に送付することとなったため,指定書式による相手方を意識した申立が求められるとの説明がありました。また,主張書面についても,非開示の希望に関する申出書を併せて提出した場合にも,相手方が写しの交付を希望すれば原則として開示するという運用となっているようです。(東京家庭裁判所以外の某家裁でも,同様の対応でした。)。

  従来は,特に裁判所のみに伝えたい事項などについて主張書面に記載に,裁判所止まりで扱ってもらう場面もありましたが,これからは,常時,訴訟の際の準備書面と同じく,相手方への開示を前提に配慮をした上で充分な主張を記載した書面を提出する必要があります。

 

3 委任状・資料説明書

  家事事件手続法の施行により,当事者の代理人が「手続代理人」と呼称されることになりました。これにより,委任状も「手続代理委任状」という名称になります。「訴訟委任状」で提出しないように注意が必要です(別の遺産分割調停に関する研修の際,調停員を務める講師から,未だに「訴訟委任状」での提出が多いため,気をつけて欲しいとの注意喚起がありました。)。

  また,手続代理人が資料を提出するにあたっては,厳格に資料説明書の提出が求められるようになりました(研修では,規則上の提出義務ではないが,手続代理人が提出する場合には事実上「義務」という趣旨の説明でした。)。なお,離婚調停を申立てる場合,併せて婚姻費用分担調停を申立てることが多く(別居後の生活の支払いが止まっていたり,低額だったりすることが多いため。),形式的には別事件として同じ手続の中で調停が進められるのですが,それぞれの調停について資料を提出する場合,資料説明書は一括して作成してよいそうです(当初,分けなければならないのかと思って書記官に問い合わせたところ,一本化して良いとの回答でした。)。

 

4 雑感

  以上は,家事事件手続法施行後の調停での経験に基づいて記載したので,部によっては対応が異なったり,地方ごとに,提出を求められる資料や運用に差違があるところもあろうかと思いますが(実際に地方の家裁では,申立の際に提出を求められる書類が異なったりします。),やはり全体に,調停の手続がかなり訴訟に近づいたという印象を持っています。

  離婚調停では,言い分を述べる機会こそ,従来通り交互に入室し個別に与えられますが,当事者双方が同席して進行や争点を確認し,主張すべき点を絞り,主張を重ねていくというプロセスが一層意識されてきたと感じます。

  代理人として,家事事件手続法の施行前以上に,手続の運用を適確に理解し,依頼者に不安が生じないよう配慮しながら,主張を効果的に裁判所に伝えることを意識する必要性を感じています。 

家事事件手続法についての研修を受けてきました(1)

来年1月から,遺産分割調停や離婚調停などの家事事件についての新しい手続を定める「家事事件手続法」 が施行されます。

先日,この施行に併せて,東京家庭裁判所の裁判官を講師に招いての,東京三弁護士会主催の研修会「家事事件手続法の制定を契機とした家事事件手続の在り方」が開催されました。
公園通り法律事務所でも,家事事件のご依頼を多くいただくため,参加して勉強してきました。
研修会では,家事事件手続法の施行に併せて,裁判所の調停・審判についての運用がどのように変わるのかという点について,詳しい説明がありました。これまでの手続とは「かなり変わるな。」という印象です。
調停の代理人をお引き受けするにあたり,ご依頼者を不安にさせることのないよう,しっかりと新しい手続を把握するよい機会になりました。

特に従来の手続と変わり,意識しておかなければならないと感じたのは以下の点です。

1 申立書等各書式が一新される

  これまでは,申立書は比較的自由なスタイルで出すこともできましたが,来年1月以降はすべて新しい書式を使用しなければなりません。
  東京家庭裁判所では,今年の10月から試行期間として,新しい書式の利用が始まっているとのことです。
  →東京家庭裁判所で使用する書式はこちら
  ※申立書の申立人欄には代理人記載欄がないので「申立人手続代理人等目録」に,送達場所は「連絡先等の届出書」に記載しなければなりません。
   書式がかなり増えているので要チェックです。

2 申立書のコピーが原則として相手方にも送付される(家事事件手続法256条)

  この規定は家事事件手続法により新設されたものです。従来,申立書は原則として裁判所のみに提出していましたが,これからは原則として相手方に送付されることになるため注意が必要です。
  これまでは,手続の初めの段階から調停委員にこちらの主張について理解を深めてもらえるよう,ご依頼者から伺った経緯や事件のポイントなどをかなり詳しく申立書に記載していました。
  申立書が相手方に送付されるとなると,離婚事件の場合など,こちらの主張が相手方を刺激して話し合いを難しくしてしまう危険性もあるため,詳細な記載は控えた方がよいという場合もあります(新しい書式も最低限の内容のみを記載する簡素な形式になっています。)。
  代理人としては,手続の初めの段階で調停委員に事件をしっかりと把握してもらう機会がなくなるのかと懸念したのですが,裁判官からの説明では主張は別途「主張書面」に記載して積極的に提出して欲しいとのことでした。
  「主張書面」はこれまでの調停手続でも活用していましたが,これからは,申立段階から,詳しい主張については「主張書面」記載して提出すればよいことになります。
  「主張書面」は離婚調停や一般調停では,希望した場合のみ相手方に交付されることになるため,相手方に直接見られたくない主張も記載することができます(ただし,閲覧謄写との関係では要注意です※1。また,婚姻費用・養育費・遺産分割などのいわゆる経済事件・合意に相当する審判の場合には,裁判官の判断によって相手方に交付される場合があるそうです。)。

3 双方当事者本人立ち会いのもとでの手続説明が行われる

  調停は,基本的に申立人と相手方とが交互に入室して調停委員と協議する形で進められています。調停成立時や,進行の中で当事者を同席させた方がよい場合など,双方当事者が同席する場面もありますが,ほぼ顔を合わせずに調停委員を挟んで協議することになります。
  家事事件手続法の施行後もこのスタイルに変更はないのですが,東京家庭裁判所では新たに,毎回の調停の初めに当事者本人が同時に入室し,調停の手続やその日の進行についての説明を受ける手続が始まります(代理人がついている場合にも,本人の同席を求めるそうです。)。
  この手続説明の場面,毎回当事者双方が顔を合わせることになるので,従来の手続とはかなり変わる印象です。
  この手続の趣旨は,当事者双方に相手がいる話し合いであることを意識してもらうこと,裁判所が中立・公平な立場で調停を進めていることを理解してもらうこと,当事者どうしで情報を共有すること等にあるそうです。
  配偶者のDVやモラルハラスメントが原因で離婚を求める場合など,調停の席でも相手と顔を合わせることが精神的に大きな負担となることがあります。このような場合には,事前に「進行に関する照会回答書」に事情を記載して,手続説明であっても同席は拒否する旨伝えておかなければなりません。
  試行期間中は,同席に問題のない事案で実施されているとのことですが,代理人としては,ご依頼者の精神的な安定や安全の点から相手方と顔を合わせることを避けた方がよいケースでは,裁判所に積極的に事情を伝え適切な対応を求める必要があるな感じました。

この他にも,訴訟と同じように,提出資料に号証番号を付し,資料説明書(訴訟の証拠説明書と同じ書式でよいそうです。)をつけることが求められるようになる等,かなり訴訟に近い運用がなされることになるようです。
また,調停等の記録の閲覧謄写(家事事件手続法254条1項,6項)に関する規定・運用も大きく変わり,調停における資料提出段階で「非開示の希望に関する申出書」を添付しなければ,審判段階で,当事者の請求によりほとんどの提出書類について閲覧・謄写が許可されることになります(※1)。この点については,整理して投稿したいと思います。

今後ご依頼をいただく家事事件にあたっては,家事事件手続法の規定と新しい運用を押さえた上,しっかりと対応させていただきたいと思います。
改めて,仕事をしていく上で適切な情報更新・勉強を続けていく必要性を強く感じました。
これからも研修など,積極的に参加していこうと思います。


投稿者:圭


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